お子さまへ一生に一度の贈り物だから。
プロが教える心から満足できるひな人形の選びかた
ひな人形の購入を考えるみなさん、パッと見の印象が良くて、値段はできるだけ手ごろなものがいいな……と思ったりしませんか?ひな人形は家や車、宝石と同じ、ひとつの大事な財産。お子さまにとっては一生に唯一の、長くつき合う大切なパートナーです。家を購入するとき、材質やスペックを気にせず、見た目と値段だけで決める方はほとんどいませんよね。おひな様も同じです。女の子が生まれたご家庭にとっては、かわいいお嬢さんの大事な初節句、初めての晴れ舞台です。初節句を迎えるにあたって、MAHOROBAは、ひな人形のことを少しでも知っていただき、ひな人形を飾る春が待ち遠しくなる、最高のものを選んでいただきたいと考えています。高ければ良いというわけでもありませんが、安いものには、やはりそれなりの理由があります。このページではプロから見た選ぶポイントをお伝えし、ご家族ご一同に理解していただいた上で、ひな人形ご購入の際に活用いただければ幸いです。
MAHOROBAの商品ラインナップの基本コンセプトは「現代の暮らし・趣向(モダンカルチャー)に寄り添う商品」。 4つの角度からそれぞれ"スタイル"として厳選した商品をご提案しています。
ひとくちにひな人形といいますが、大きく分けて「衣裳着人形」と「木目込み人形」の2つがあります。ふつう、みなさんがイメージするおひな様は、衣装着人形のほうではないでしょうか。華やかに仕立てられた十二単を着ています。一方、木目込み人形とは、木の胴体に衣裳の端を埋め込んでつくる小粒で可愛らしいもの。一見衣装布が張り付けられているように見える人形です。ともに、江戸時代から続く伝統的なひな人形で、どちらが良いというものではなく、デザインの好みや条件で選んでいただければ良いと思います。
ひな人形を選ぶ時、多くのお客様はまずお内裏さまの顔を見られると思います。殿がイケメンかどうか、姫が美人系か可愛い系か・・・大きく分けて2種類、京風と関東風に分かれます。京風の顔は切れ長の目に鼻筋の通った、とても高貴で細面のお顔です。ひなまつりが現在の形になった江戸時代中期のころからの伝統的な顔で、いわゆる京美人でモデル風の顔立ちです。一方、関東風の顔は、目がパッチリしていて頬のあたりがふっくらとしており可愛らしく、現代人に近い顔立ちです。俳優・女優やアイドルといったところだと思います。京風・関東風それぞれの明確な定義はありませんし、人間の顔と同じようにどちらが良いというものではなく、好みのおひな様を選んではいかがでしょうか。お子さまの顔を思い浮かべながら、自分の娘・孫はモデル系だろうか?それともアイドル系? などと考えながら、ひとつひとつ、おひな様のお顔をじっくり見て決めていくのが、選ぶ楽しみのひとつだと思います。
本来の、伝統的なお人形の顔(頭)は、桐塑頭(とうそがしら)と呼ばれます。固めた桐の粉に、ハマグリやカキの殻でできた胡粉(ごふん)という粉を重ねて塗って仕上げる頭です。型をまったく使わず手作りするため、ひとつひとつ、表情が微妙に異なります。熟練の職人技が必要ですし、製作に時間と費用がかかるため、たいへん高級なおひな様です。一方、流通している大半のお人形に使用されている頭は石膏頭(せっこうがしら)です。石膏を使用して、型を使って成形し胡粉で仕上げる頭です。型を使用するため表情のバラつきが少ないこと、比較的安価であることや、職人さんの減少による供給量減を解消できるという製作側の利点もあります。表情や品質も桐塑頭と比べて遜色ありませんし、型作りから塗りや抜き(目や口を彫る工程)に至るまで、丁寧に伝統的な手作業で行われています。
ひとの服と同じように実にさまざまな柄・色の衣装があり、着物に使うような豪華な金襴や友禅染などの織物、着物の帯地をそのまま使用した高級品まで、その種類は幅広く、なにを基準に選んだら良いのか、迷ってしまうと思います。ここ最近は、水色やパッションピンク、パステルカラーの明るい色で、花柄やうさぎなどの動物柄が入ったとてもかわいい衣装が増えています。一方で、昔から天皇家官位が着用していた色(有職)で、和文様など、比較的地味な柄が使用された金襴の衣装が伝統的なものです。選ぶ感覚は洋服とは少しちがうかもしれません。しかし、伝統的かどうかはひとまず置いておき、お子さまのイメージにいちばん合うものを選んではいかがでしょうか。たとえばシックで高貴なドレスと、流行の色・柄を取り入れた華やかなドレス、お子さまに似合うのはどちらですか? おひな様の衣装も同じ感覚で選ばれれば良いと思います。
お内裏様とおひな様の衣裳は金襴と呼ばれる布を使用したものが主流です。金襴とは繻子(しゅす=サテン)などの地の緯糸に、金箔や金糸を使い紋様を経に織り出した、古来中国に起源を持つ伝統的な織物のことです。材質は、絹、化学繊維と絹が混ざったもの、化学繊維と、おもに3つあります。絹が100%の生地を特に正絹(しょうけん)といい、その他、絹とポリエステル等の化学繊維やレーヨンとの合成、化学繊維のみを使用したものもあります。見分けかたとして、絹は光沢があり手ざわりが非常になめらかでやわらかく、化学繊維はごわつきがあります。正絹のひな人形は最高級品で生産数も限られ、希少性がありますが、最近では化学繊維の質も向上し、正絹でなくても、非常に綺麗な仕上がりになっています。次に着物の帯を衣装に仕立てた雛人形ですが、そもそも帯自体が一本数十万円、中には百万円以上のものもありますので、大変高級なひな人形となります。柄ゆきや材質は、基本的には金襴と同じですが、柄が格段にキメ細くなります。通常、ひな人形のための金襴は人形用に製作されたものです。が、人間が実際に身につける帯の金襴の場合は、見える面積が広く、柄が大きくかつ細かく表現しなければ美しく見えないからです。衣裳は着せかたにも種類があり、全身に重ね着のもの、上半身だけ重ね着したもの、襟と袖の表に見える布が重なった部分だけ重ね布を貼りつけたもの の3つがあります。袖の中から向こう側が見通せるものが着せてあるタイプのお人形で、布の枚数が多い分、重厚感と高級感があるのが特徴です。お店の商品説明に「本着せ」などと書いてあるものがこのタイプのお人形です。
手・足には木製とプラスティック製があります。木製は職人の手作業による木彫りで、頭と同様に胡粉で白く塗り上げたものです。指の1本1本がハッキリしています。プラスティック製は型にはめて作られます。樹脂は質感が独特で光沢があり、ツルツルとした質感です。木製の物よりも指の1本1本はハッキリしていません。
最近ではコンパクトな木目込み人形も大変人気で、どれもややふっくらしており優しい顔なのが特徴です。主に「筆で描き入れるもの」と「目の部分にガラスなどを入れるもの」2種類あります。目を筆で書き上げる「笹目(=書き目)」と呼ばれる目は人形師 初代原米州が考案したとされています。笹目は筆を横に幾重も重ねて描きあげていきます。細やかな線が織りなす優しい表情は、木目込み人形ならではとして、たくさんの作家に受け継がれています。ガラス目などを入れた「入れ目」のお顔は江戸時代に流行した技法です。入れ目は製作過程上、一度胡粉を塗ってから改めて目を切り出すので「目抜き十年」といわれるほど大変高度な技術と修練が必要な作業です。どちらも優しい顔になっていますが、「笹目」は比較的落ち着きがあり、一方「入れ目」は目力があるだけに意思が感じられるような気がします。
木目込人形の胴体は、桐塑と呼ばれる桐の粉を糊で固めた木のような材料を型抜きし、職人の手で削って修正します。そのボディに彫った溝に直接布地を差込み(=木目込み)、しっかりと貼り付けながら着ているように仕上げます。衣装の布地は絹織物が主流です。絹は伸縮性があるので木目込みをするのに適しています。材質は金襴、綿、縮緬(ちりめん)などが多く使われています。衣裳着人形に比べて全体的なシルエットが小さくて可愛らしいため、斬新でかわいい色や柄の布地が使われています。
最近の住宅事情では、おひな様を飾るのに躊躇されるかたもいらっしゃると思います。「うちは飾るスペースがないからなぁ……」と悩んだり、サイズ優先で考えたいお客様は、飾る場所の大きさとイメージから考えるのも良いと思います。リビングの隅、棚や小テーブルの上など、できるだけ家族が沢山過ごし、良く目にする場所であれば、おひな様を飾るのはどこだって構わないのです。その際、最優先していただきたいのは飾台の間口(幅)です。基本的に間口の広さで飾れるお人形の種類が大まかに決まります。もちろん例外もあります。木目込み人形の段飾りで70cmを超えるものや、衣裳着の収納飾りで60cmを下回るものなども、最近は見かけます。それぞれのひな人形が映える間口の、おおよその目安だとお考えください。